慢性呼吸不全
慢性呼吸不全とは
閉塞性肺疾患 (COPD)、間質性肺炎、肺結核後遺症、肺癌などの肺の病気や心臓・神経・筋肉の病気が進行すると、大気中から酸素を体に取り入れて、体内でできた二酸化炭素を体外に放出するという肺の本来の働きを果たせなくなります。その結果、血液中の酸素濃度が不足し、一部の方では二酸化炭素の濃度の上昇も伴います。この状態を呼吸不全といい、1か月以上続く場合を慢性呼吸不全といいます。
症状
主な症状は低酸素血症による息切れです。軽症の場合は坂道や階段歩行のみ息切れを自覚します。重症になると自分の身の回りのことをするだけで息切れを感じて、日常生活が困難になります。酸素が低い状態が長く続くと肺だけでなく、心臓にも大きな負担がかかります。さらに脳の活動が低下し、注意力や記憶力が低下したり、不眠となる患者さんもいます。二酸化炭素が増加するようになると、頭痛や血圧上昇、意識レベルの低下などがみられますが、ゆっくりと病気が進行した場合は症状に乏しいこともあります。
検査
原因となる病気の診断のため、胸部レントゲン・CT検査、肺機能検査(スパイロメトリーなど)、血液検査などを行います。また動いたときの呼吸状態の評価として6分間歩行テストが行われます。
治療
治療は原因となっている病気の治療に加えて、在宅酸素療法 (HOT)、非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV)、呼吸リハビリテーションを行います。これにより息切れなどの症状、生活の質、日常活動度の改善が期待できます。当院では在宅酸素療法 (HOT)と非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV)の治療が可能です。
在宅酸素療法 (HOT)
慢性呼吸不全の患者さんは自分で血液中の酸素を高めることができなくなっていますが、濃い酸素を吸入することで適切な血中酸素濃度を保つことができます。自宅でも酸素を吸入することが可能であり、在宅酸素療法(HOT)と呼ばれています。HOTでは自宅に設置した酸素供給器(酸素濃縮器や液体酸素タンク)からカニューラと呼ばれる細い管を介して鼻から酸素を吸入します。家の中も酸素の管をのばすことができるので、酸素を吸いながらトイレに行ったり廊下を歩いたりできます。外出時は携帯型酸素ボンベを持ち歩き、旅行へ行く方もおられます。安静時、動いたとき、寝ているときなど必要な酸素の濃度は変わりますので医師の指示通りに使用してください。また火気厳禁ですので禁煙できない場合は治療を受けることができません。
非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV)
二酸化炭素が増えてきた場合は酸素療法のみでは不十分であり、機械の力を借りて呼吸の補助を行う必要が出てきます。主に夜間睡眠時に非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)と呼ばれる鼻や顔に密着した特殊なマスクから、設定した圧力で肺の中に空気を送り込む治療を行います。