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気管支喘息

気管支喘息とは

気管支喘息は主にアレルギーによって呼吸の通り道である気道(気管、気管支)が狭くなる病気です。喘息の患者数は増加傾向で、日本の成人では約10%、約1000万人の患者さんがいると推定されています。意外と思われるかもしれませんが、中年以降の喘息の70~80%が成人になってから初めて発症しています。

気管支喘息を疑う症状

主な症状として咳、痰、息苦しさ、胸苦しさなどがあります。次のような症状が特徴的です。

  • ゼーゼー・ヒューヒューする喘鳴(ぜんめい)がみられる
  • 夜間から早朝、季節の変わり目に症状が悪化する
  • 運動したり冷気や煙にあたると咳が出やすい

喘息の病態

気管支喘息の患者さんでは、呼吸の通り道である気道にアレルギー性の炎症が慢性的に起こっています。炎症が起こっている気道は、ダニ、カビ、花粉、ペットなどのアレルゲン、タバコの煙、天候の変化、寒暖差などさまざまな刺激に対して、少しの刺激でも過敏に反応してしまい、気道が収縮し狭くなってしまうことで、さまざまな症状が現れます。

発症の原因となる因子

気管支喘息は個体因子と環境因子が複雑に重なり合って発症するとされています。

個体因子としては遺伝、アトピー素因(IgE抗体を作りやすいアレルギー体質)、性別(小児では男児、成人では女性)、肥満などがあります。

環境因子としては喫煙、アレルゲン(アレルギーの原因物質)、呼吸器感染症、大気汚染、食物、鼻炎などがあります。

小児喘息では90%以上がアレルゲンが原因で起こるアトピー型喘息ですが、成人喘息では60%程度にとどまります。残りの40%の方はアレルゲンが特定できない非アトピー型喘息です。

喘息の原因となるアレルゲン

アレルゲンとはアレルギーの原因物質のことをいいます。喘息の原因となりやすいアレルゲンにはダニ、カビ、花粉、ペットがあります。アレルゲンを調べる血液検査を行うことで、アレルゲンを特定し対策をとることが可能です。非アトピー型喘息の場合は、原因が特定できないことが多いです。

診断

喘息には明確な診断基準がないため、特徴的な症状から疑い、呼吸機能検査(スパイロメーター)、呼気NO検査、気道抵抗性試験(モストグラフ)、血液検査の結果と治療効果から総合的に診断します。喘息と似た症状を起こす病気を鑑別するために胸部レントゲンなどの画像検査を行います。

検査

スパイロメーター

気道がどのくらい狭くなっているかを調べる検査です。喘息の検査では通常の検査に加えて、気道を広げる薬を吸入する前と後を比べて気道が広がるかどうかを調べる気道可逆試験を行います。

 

呼吸抵抗検査(モストグラフ)

息の通りにくさを測定する検査です。スパイロメーターでは正常でもモストグラフでは異常が見つかることがあります。気管支喘息の診断・治療効果の測定に使用います。

 

呼気NO検査

吐いた息に含まれるNO(一酸化窒素)を測定して気道の炎症を調べます。主に喘息の診断に使用します。

血液検査

  • 好酸球数:白血球を構成する成分の1つです。好酸球数が高いとアレルギー疾患や寄生虫感染が疑われます。
  • 総IgE値:値が高いとアレルギーになりやすいと考えられています。
  • 抗原特異的IgE抗体:アレルギーの原因物質を特定する検査です。

治療の目標

治療の目標は「症状がなく健常人と変わらない日常生活を送れるようにすること」です。具体的には発作治療薬を使用する必要もなく、運動をしたり走っても、全く症状が出ない状態です。

喘息の薬物療法

喘息の治療薬は大きく長期間管理薬と発作治療薬に分けられます。

長期間管理薬

毎日使用することで炎症を抑えて発作を予防する薬です。薬をはじめると大体2~3か月以内には夜間の症状や1秒量といわれる呼吸機能が改善するとされていますが、気道の炎症はすぐには改善しません。そのため医師の指示通り忘れずに使用することが大切です。
長期間管理薬で最も重要な薬は吸入ステロイドです。吸入薬は病気の気管支に直接的に薬を振りかける治療で、ステロイドの量は内服の1/100ほどと少ないため大きな副作用はほとんどありません。ただし薬が口の中に残ると、声がかれたり、カビが増えることがあるため、うがいが必要です。その他吸入長時間作用性β2刺激薬、吸入長時間作用性抗コリン薬を使用します。内服薬では炎症を抑える抗ロイコトリエン薬、気道を広げるテオフィリン徐放製剤などがあります。病状に合わせて2~3種類の吸入薬を合わせた配合剤を使用したり、内服薬を併用する場合があります。これらの薬を十分に使用しても改善が乏しい重症喘息では、生物学的製剤と呼ばれる注射製剤を使用し治療を行います。

発作治療薬

発作治療薬は気管支を速やかに広げて呼吸を楽にする薬です。具体的には発作の時に、メプチンなどの吸入短時間作用性β2刺激薬などを頓用で使用します。ただしシムビコートなどの一部の吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬の合剤は、発作治療薬として使用することが可能です。これらの治療で反応が乏しい場合は、ステロイドの内服治療や点滴を行います。

喘息を悪化させる要因を取り除くことが必要です

喘息の治療は治療薬だけではなく、悪化させる要因を取り除く自己管理も必要です。特にアレルゲン、喫煙、肥満(メダボリックシンドローム)、呼吸器感染症は喘息を悪化させます。その他、気候の変化、大気汚染、ストレス、アルコールなども悪化要因です。

アレルゲン

アレルゲンが原因の方はそれに対する対策が必要です。ダニ、カビであれば自宅の環境対策が必要です。花粉であれば季節に合わせた対策が必要となり、花粉症の治療もあわせて行うことが必要です。スギ花粉であれば舌下免疫療法も検討されます。ペットであれば付き合い方を考える必要があります。

喫煙

喫煙により気道の炎症が悪化したり、咳やたんが増え、呼吸機能が低下し、治療薬の効果が低下してしまうため、禁煙が必要です。タバコを止めてみようと思われる方は禁煙外来をおすすめします。

肥満(メタボリックシンドローム)

内臓脂肪に含まれる脂肪細胞が喘息を悪化させることが知られています。BMI 25未満が適切とされています。

呼吸器感染症

かぜインフルエンザ肺炎などの呼吸器感染症は喘息を悪化させる要因です。肺炎球菌・インフルエンザの予防接種が推奨されています。

合併症

喘息の患者さんでは、アレルギー性鼻炎・花粉症慢性副鼻腔炎など鼻の病気を合併しやすいことが知られています。理由として、喘息は下気道、鼻の病気は上気道と同じ気道で起きる病気だからです。その他合併症としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)・肺気腫逆流性食道炎、睡眠時無呼吸症候群などが知られています。これらの病気がある場合は、治療を行うことで喘息の症状が改善される可能性があります。

喘息発作に対する対応

喘息がある患者さんが感染などをきっかけに、発作的に気管支が狭くなり呼吸困難や喘鳴がひどくなる状態を喘息発作と言います。発作が起きた場合、医師から指示された方法で吸入短時間作用性β2刺激薬(メプチンなど)を吸入します。これで症状が落ち着き、3~4時間効果が持続するようであれば自宅療養が可能です。横になれない、メプチンなどを使用しても良くならないなど、症状が悪くなっていく場合は早めに病院を受診してください。

気管支喘息と診断されたら

喘息は糖尿病や高血圧などと同じように呼吸器における慢性疾患です。
成人喘息はアレルギーの原因はわからない非アトピー型が多く、様々な要因が重なり合っているため、基本的には完治が難しく、付き合っていく病気になります。喘息の患者さんはよく氷山に例えられますが、症状がなくても気道の炎症や過敏な状態が続いています。そこにかぜなどの呼吸器感染症などさまざまな刺激が加わり、気管支が狭くなることで、はじめて症状が出現します。症状がなくなれば、喘息は治ったと思われるかもしれませんが、気道の炎症や過敏な状態が続いています。症状がある時だけ薬を使うなど日々の治療が不十分であると、気管支が狭くなることが繰り返されます。この状態が長引くと気道が固く狭くなり、元に戻らなくなる「リモデリング」と言われる状態になり、呼吸機能が低下し、治療によって症状をおさえることが困難になり、喘息が重症化します。そのため症状がなくても、定期的に吸入薬を中心とした治療を行い、炎症をしっかりコントロールすることが大切です。当院では患者さんにあった吸入薬を正しく使っていただくために、当院では薬局と連携し使い方を定期的にチェックする「吸入指導」を行っています。

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