糖尿病
- 健康診断で血糖値、HbA1cの異常を指摘された
- 以前と比べてよく喉がかわく、頻回にトイレに行く、体重減少などの糖尿病を疑う症状がある
- 現在糖尿病で通院しているが、より治療を強化する必要があると言われた
- 糖尿病で通院していたが、通院をやめてしまった
- 将来糖尿病になるかどうか心配
糖尿病とは
糖尿病は膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作用不足により、慢性的に高血糖になる病気です。患者さんの数は増加傾向で、糖尿病予備軍を含めるとおよそ2000万人にのぼるともいわれています。
主な基準として、空腹時血糖値が126mg/dlまたは随時血糖値200mg/dl以上とHbA1c 6.5%以上を満たす場合に糖尿病と診断されます。
糖尿病の分類
糖尿病は主に1型糖尿病と2型糖尿病に分類されますが、ほとんどが2型糖尿病です。その他には遺伝子異常、膵臓や肝臓の病気、ホルモンの病気、ステロイドなどの薬剤が原因で起こる糖尿病、妊娠糖尿病など様々な種類があります。
1型糖尿病
主に自己免疫の異常で膵臓のβ細胞が壊されてしまった結果、インスリン分泌が高度に低下することで発症します。通常インスリン治療が必要となります。
2型糖尿病
遺伝的な影響と過食、運動不足、肥満などの生活習慣が原因で、多くの場合インスリンが効きにくくなり(抵抗性と言います)、これを補うインスリンが徐々に分泌されにくくなることで発症します。初期には症状があまりなく、健診などで偶然に発見されることも多いです。
なぜ糖尿病を治療する必要があるでしょうか?
ある程度の高血糖状態が続くと、口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状が出現します。これらの症状は血糖値が低下することで消失し、初期には症状がない場合がほとんどです。ではなぜ糖尿病を治療する必要があるのでしょうか?糖尿病が最も恐ろしいのは、無症状のまま全身の血管を傷つけていき、生活の質を低下させ、場合によっては生命に直結する合併症を引き起こすことです。細い血管に障害が起こると神経障害、網膜症、腎症を発症し、進行すると足壊疽により下肢切断、失明、人工透析につながる可能性があります。太い血管に障害起こると心筋梗塞、狭心症、脳卒中、末梢動脈疾患などを発症する可能性があります。血糖値を適切にコントロールすることでこれらの発症リスクが低下することから、早期の治療介入が非常に大切です。
糖尿病の治療
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本となります。どちらか一方ではなく両方行うことが大切です。これらの治療で目標となる血糖コントロールができていれば薬物療法は必要ありません。薬物療法が必要な方でも、食事療法と運動療法を行うことで薬の使用量を減らすことが可能となります。
食事療法
食事療法の目的は、健康な方と変わらない栄養素を摂取しながら、血糖値を適正に保ち、合併症の進展を抑えることにあります。食事療法が適切に行われると、インスリン作用不足や食後高血糖の改善、肥満、高血圧、脂質異常症の改善にもつながり、体の好循環につながります。日本人のBMIは20~25kg/m2程度が適切と考えられており、肥満もやせも良くありません。患者さんによって生活スタイルが異なり、年齢によってもカロリーなどの考え方が異なるため、栄養指導を併用しながら患者さんにとって理想的な食事を目指していきます。
糖尿病の方で極端な糖質制限をされる方がいますが、基本的には3食きちんと食べることです。極端な糖質制限は次の食事で血糖が上がりやすくなります。夕食は遅いと次の日の朝の血糖値が上がってしまうので、できるだけ早い時間に食べるようにしてください。一般的に炭水化物が多いケースが多いので、お菓子などの間食、清涼飲料水、果物、夜食が多い方はまずはそれを減らすことからはじめてみてください。
食事の食べ方ですが、血糖値の急激な上昇を防ぐために、食事はゆっくりよく噛んで食べてください。食べる順番としては野菜から食べる、次に魚や肉、最後にご飯などの主食を食べると、血糖値が上がりにくくなります。食物繊維は糖質と関係なく1日20g程度摂取することが推奨されています。ナッツ類、豆類、根菜類、海藻類、きのこ類、主食では全粒粉のパンや玄米には食物繊維が多く含まれますのでぜひ取り入れてみてください。
運動療法
運動することで、血液中の糖質が消費され血糖値が改善します。また食事療法と同様に肥満、高血圧、脂質異常症の改善が期待できます。できるだけ筋肉量を維持しながら内臓脂肪を減らすことが重要と考えられています。食事療法だけの減量は全身の筋肉量が低下し、代謝が低下しリバウンドしてしまう可能性が高いので運動療法を一緒に行ってください。
注意点として運動療法を始める場合、必ず眼科の先生に診察していただき網膜症がないかどうか、運動をしていいかどうか確認してから行うようにしてください。また心臓病や整形外科で病気をお持ちの方は、主治医の先生にどの程度運動していいか必ず確認してから行ってください。糖尿病治療中の方は薬の調整が必要となる場合などがありますので主治医の先生とよく相談してから行ってください。
ガイドラインでは早歩き、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を週3~5回、1回20~60分、1週間に150分程度行うことが勧められていますが、最初から行うのは難しいかもしれません。まずは週1回から20分程度からはじめてみてください。
運動療法と言われると難しいとイメージがありますが、日常生活で運動できる機会はたくさんあります。例えばエレベータを使わず階段を使う、食後30分程度してから少し歩く、仕事中座っている時間を減らすだけでも血糖は下がります。自宅で簡単にできる運動としては1日20回程度のスクワットをお勧めしています。
アルコール
血糖コントロールが問題なければ次のうちどれか一つ、缶ビール350ml、日本酒1合、ワイングラス2杯程度であれば週3回程度飲酒いただくことは問題ありません。アルコールも糖質を含まないものもありますが、結局はおつまみなどでカロリーオーバーとなっている方が多いので程々が肝心です。
喫煙
喫煙は動脈硬化をすすめ、心臓病、脳卒中を起こしやすくします。また糖尿病を悪化させることがわかっています。禁煙できていない方は禁煙治療が勧められます。
薬物療法
必要に応じて薬物治療を行います。経口血糖降下薬、インスリンやGLP-1受容体作動薬などの注射製剤があります。患者さんのライフスタイルに合わせた治療を提案させていただきます。
糖尿病の患者さんへ
糖尿病治療の目的は合併症や病気の進展を防ぎ、健康な方と変わらない状態を目指すことです。血糖だけでなく、高血圧、脂質異常症についても適切なコントロールを行うと合併症を抑えることができますので、これらの病気がある方は同時に治療を行っていきます。また糖尿病ではがんのリスクが上昇するため、がん健診をお勧めします。繰り返しになりますが、どのような患者さんでも食事療法と運動療法が基本となります。ストレス社会ではありますが適度な休息と十分な睡眠が必要です。当院では定期外来において患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせた血糖管理目標を設定し、食事療法、運動療法のアドバイス、薬物療法を行っていきます。